ロデヴ(高加水ハードパン)の作り方と成功のコツ|加水90%の仕組みを整理

高加水ハードパンのロデヴを焼く女性が、みずみずしい生地の伸びを確かめながら成形作業を進めるキッチンの様子 種類別レシピ(ハード・食パン・菓子・惣菜・成形)

加水率90%前後という驚きの水分量で焼き上げるロデヴは、南フランスのロデヴ地方を起源とするハードパンです。外皮はパリッと薄く、内側にはもちもちとした大きな気泡が広がる独特の食感は、バゲットや食パンとは一線を画します。高加水パンというと扱いが難しそうに感じますが、工程ごとの役割を理解して進めれば、家庭のオーブンでも十分に焼き上げることができます。

ロデヴ特有の製法として知られるのが、オートリーズ(粉と水を混ぜて休ませる工程)と、バシナージュ(グルテンが形成された後に水を足す工程)の組み合わせです。一度に全量の水を加えるのではなく、段階的に水を生地になじませることで、高加水でも扱いやすい生地を作ることができます。

この記事では、ロデヴの基本レシピから一次発酵・成形・焼成まで、工程を順を追って整理します。失敗しやすいポイントとその原因も合わせてまとめているので、初めて挑戦する方もぜひ参考にしてください。

ロデヴとはどんなパンか

ロデヴを作り始める前に、このパンがどういう構造で、何が他のフランスパンと違うのかを整理しておくと、工程の意味が理解しやすくなります。製法の特徴を先に知っておくことで、「なぜこの手順を踏むのか」が自然につながります。

南フランス・ロデヴ地方が起源のパン

ロデヴは、フランス南部エロー県の小都市「ロデヴ」に起源を持つ伝統的なパンです。現地では日常的に食べられているパンで、ルヴァン種(天然酵母の一種)とイーストを併用した製法が特徴とされています。

日本では2010年代以降、大手ベーカリー「ドンク」がこのパンを広め、「パン・ド・ロデヴ普及会」を通じて全国のパン職人に製法が共有されたことで知られるようになりました。「ロデブ」と表記されることもありますが、フランス語の発音に近い「ロデヴ」が広く使われています。

製法の核心は、加水率90%前後という高い水分量です。通常のバゲットが加水率70%前後であることを考えると、ロデヴの生地がどれだけ水を多く含んでいるかがわかります。この高加水が、あの大きく不規則な気泡と、もちもちしたクラム(内側の白い部分)を生み出します。

バゲットや食パンとの主な違い

ロデヴを他のパンと比較すると、食感・成形方法・発酵の扱い方がいずれも異なります。

項目バゲットロデヴ
加水率の目安約70%約90%以上
クラムの食感軽くふんわりもちもちしっとり
気泡の大きさ比較的均一粗く不規則
成形方法棒状に伸ばしてクープ折りたたみ+ねじり
二次発酵の長さ30〜60分程度短め(15〜30分)
使用酵母主にイーストルヴァン種+少量イースト

ロデヴは生地がとても柔らかいため、クープナイフで細かく切れ目を入れることが難しく、生地をねじることでその代わりとするのが一般的です。二次発酵を長くとりすぎると形が崩れやすいため、成形後は素早く焼成に移ります。

ルヴァン種とイーストの役割分担

本来のロデヴはルヴァン種(自家製天然酵母)を主体とし、少量のドライイーストを補助的に使う構成が基本です。ルヴァン種は乳酸菌と酵母が共存した発酵種で、酸味と深みのある風味をパンに与えます。

家庭でルヴァン種を使う場合は、「ルヴァンリキッド(液種)」が扱いやすいとされています。ルヴァンリキッドは粉と水を等量で継いで育てる液状の発酵種で、生地への混ざりやすさと高加水生地のまとまりやすさに貢献します。ルヴァン種がない場合や準備が難しい場合は、ドライイーストのみで作ることもできますが、その場合は風味がシンプルになります。

ロデヴの基本構成
・加水率:90%前後(生地はとろとろに近い状態)
・酵母:ルヴァン種+少量ドライイーストが基本
・成形:折りたたみ+ねじり(クープなし)
・二次発酵:短め(長すぎると形が崩れる)
    >ルヴァン種は風味と生地のまとまりに貢献する>ドライイーストのみでも焼けるが、風味は異なる>加水率が高いほど気泡は大きく、もちもち感が増す>二次発酵は長すぎず、成形後は素早く焼成へ移る

基本の材料と配合の考え方

ロデヴの配合は、使う粉の種類や加水率の設定によって仕上がりが大きく変わります。どの粉を選ぶか、水をどの割合で分けるかを先に整理しておくと、作業中に迷いにくくなります。

粉の種類と配合比率

ロデヴには準強力粉(フランスパン用粉)を主体に使うのが一般的です。準強力粉はグルテン量がほどよく、高加水でも生地が伸びやすい性質があります。強力粉で代用することもできますが、グルテンが強すぎるとロデヴ特有の大きな気泡が出にくくなる場合があります。

ライ麦全粒粉や小麦全粒粉を粉全体の10〜35%程度配合すると、吸水率が上がり風味も豊かになります。ただし全粒粉が多いほど生地は重くなり、気泡は小さくなる傾向があります。初めて作る場合は、準強力粉を主体として全粒粉を20%以下に抑えるとまとめやすいです。

粉の種類によって吸水量は変わるため、記載のレシピ通りの水量が必ずしも最適とは限りません。足し水(バシナージュ)の段階では、生地の状態を見ながら2〜3%ずつ調整することをおすすめします。

ベイカーズパーセントで見る標準的な配合例

ベイカーズパーセントとは、粉全体の重さを100%として各材料の割合を示す方法です。ロデヴの標準的な配合例を以下に示します。

材料ベイカーズパーセント目安備考
準強力粉60〜85%主体。フランスパン用粉
全粒粉(小麦またはライ麦)15〜40%風味・吸水に貢献
水(本捏ね時)70〜80%オートリーズ分含む
足し水(バシナージュ)10〜20%グルテン形成後に追加
ルヴァンリキッド25〜40%省略の場合はイーストを増量
2%グルテン形成と味の調整
ドライイースト0.1〜0.3%ルヴァン種補助または主体

塩はグルテン形成を助ける役割もあるため、入れるタイミングが重要です。最初から入れすぎると酵母の働きを抑制するため、捏ね開始のタイミングで加えるのが基本です。砂糖(きび砂糖など)を少量(2〜3%)加えると、発酵の立ち上がりがスムーズになります。

水の温度管理と季節調整

高加水パンは仕込み水の温度が生地温度に直接影響します。生地温度が上がりすぎると一次発酵が早く進みすぎ、管理が難しくなります。夏場は冷水(10〜15℃程度)を使い、冬場は人肌程度(25〜30℃程度)に温めた水を使うのが一般的な調整方法です。

目安となる捏ね上げ温度は23〜25℃です。室温が高い季節は、粉を事前に冷蔵庫で冷やしておく方法も有効です。仕込み水の温度を毎回一定にするより、仕上がりの生地温度を基準にして逆算する習慣をつけると再現性が高まります。

水の温度管理の目安
・仕込み水の目標温度:夏は10〜15℃、冬は25〜30℃
・捏ね上げ温度の目標:23〜25℃
・全粒粉が多い場合:吸水が増えるため足し水量を調整
    >粉の種類が変わると吸水率も変化する>足し水は生地の状態を見ながら少量ずつ加える>捏ね上げ温度を計ることで発酵時間の見通しが立てやすくなる>季節ごとに仕込み水温度を調整することが安定した仕上がりにつながる

オートリーズ・捏ね・バシナージュの手順

ロデヴの工程の中で最も重要な3つが、オートリーズ(前段階の水和)・捏ね・バシナージュ(足し水)です。この3工程がグルテン形成の土台を作り、高加水でも扱いやすい生地を生み出します。

オートリーズで下地を作る

オートリーズとは、粉と水だけを混ぜてひとまとまりにした後、酵母や塩を加えずにしばらく休ませる工程です。この休養時間中に、粉が水分を吸収し、捏ねなくても自然にグルテンが形成されます。

全粒粉を多めに使うロデヴでは、全粒粉の吸水に時間がかかるため、オートリーズは最低でも1時間、長い場合は9〜12時間かけることもあります。長時間おく場合は、夏場など室温が高い季節は冷蔵庫で管理します。室温で長時間置くと酵母が先行して発酵が進みすぎる場合があるためです。

オートリーズ後の生地は、混ぜただけとは思えないほどまとまりが出ます。指で引っ張るとゆっくり伸びるようになっていれば、次工程に進む準備ができたサインです。

捏ねの目的とホームベーカリーの活用

捏ね工程では、ルヴァンリキッドと残りの水、ドライイーストを加えて生地をしっかり捏ねます。高加水生地は手捏ねだとグルテンをつなげるのに時間がかかるため、ホームベーカリーやスタンドミキサーを使う方法が効率的です。

ホームベーカリーで捏ねる場合は、低速〜中速で8〜10分程度捏ね、最後の1〜2分を高速にするとグルテンがより強くつながります。捏ね上がりの確認は、生地の一部を指で薄く伸ばす「グルテン膜テスト」で行います。薄く伸ばしても破れず、透けて見えるほど膜がつながっていれば捏ね完了の目安です。

捏ね不足の状態でバシナージュに進むと、足し水が生地に混ざらず分離しやすくなります。捏ねの段階でグルテンを十分につなげることが、次のバシナージュを成功させる前提条件になります。

バシナージュ(足し水)の手順とコツ

加水90%のロデヴ作りを解説する記事に合わせた、スライスしたパンを保存する冷凍庫内の様子

バシナージュとは、いったんグルテンがつながった生地に追加の水を少しずつ加えていく工程です。この製法がロデヴを加水率90%超えにするための鍵で、最初から全量の水を加えるのではなく段階的に加えることで生地への水の定着がよくなります。

足し水は一度に全量を入れず、数回に分けて少量ずつ加えます。加えるたびに生地が一度ゆるくなり、捏ね続けると再びまとまってきます。このまとまり感が出たら次の水を加えるタイミングです。ホームベーカリーで行う場合は、ラップをふんわりかけて飛び散りを防ぐと後片付けが楽になります。

足し水が完了した生地は、グルテン膜がさらに薄く引き伸ばせる状態になります。仕上げの手触りはとろりとした柔らかさで、触ると少し手にくっつく程度が目安です。べとつきが強すぎる場合は、足し水の量を次回から2〜3%減らして調整します。

バシナージュ成功のポイント
・必ず捏ねでグルテンをつなげてから足し水を加える
・足し水は全量を一度に入れず、少量ずつ数回に分ける
・加えるたびに生地がまとまるのを確認してから次を加える
・粉の種類によって吸水量が異なるため、足し水量は生地の状態で調整する
    >グルテン膜テストで捏ねの完成を確認してから足し水を始める>足し水後の生地はとろとろだが、正常な状態>ホームベーカリー活用時は飛び散り対策にラップを活用する>捏ね不足のまま足し水を加えると生地が分離しやすい

一次発酵・成形・焼成の流れ

捏ねとバシナージュが終わったら、一次発酵・成形・焼成へと進みます。高加水生地は形が崩れやすいため、各工程の判断基準を理解しておくことがそのまま仕上がりの差につながります。

一次発酵のパンチ(折りたたみ)で生地を強化する

一次発酵では、途中でパンチ(折りたたみ)を入れることで生地のグルテンを強化します。ロデヴの場合、28℃前後の環境で1時間発酵させた後にパンチを1回入れ、さらに1時間発酵させて2回目のパンチを入れ、最後にもう1時間発酵させる(合計3時間)という手順が参考例として挙げられます。

パンチの方法は、生地の下からすくい上げるように持ち上げて中央へ折りたたみ、ボウルを回しながら4〜6回繰り返します。手ではなくカードや水をつけた手で行うとべたつきが抑えやすくなります。1回目より2回目のパンチの方が生地に空気が含まれ、ふっくらとした感触になります。

一次発酵の完了の目安は生地が約1.5倍程度になることです。ただし発酵時間はあくまで目安で、室温や酵母の状態によって変わります。生地の膨らみと表面に出てくる気泡で判断することが基本になります。

成形は折りたたみとねじりで手早く

成形は高加水生地にとって最もデリケートな工程です。作業台と生地の表面にたっぷりと打ち粉を振り、ボウルを逆さにして生地を取り出します。上下左右から1/3ずつ折りたたんで閉じた後、パンマット(キャンバス地)の上に移します。

ロデヴの独特の形状は、生地を両手で持ち、中央に寄せるように軽くねじって作ります。左右に引っ張ると焼き上がりが薄くなるため、あくまでも「寄せて形を整える」感覚で扱います。成形は触れる時間を最小限にして、素早く終えることが崩れ防止につながります。生地が扱いにくい場合は、成形前に30分ほど冷蔵庫で冷やすと生地が締まり作業しやすくなります。

分割する場合は300g以上の大きめにすることで、ロデヴらしいもちもち感が出やすくなります。小さく分割しすぎると、焼き上がりの内側の食感が変わりやすいため注意が必要です。

焼成は高温短時間と蒸気が鍵

ロデヴの焼成は、できるだけ高温(250℃以上)でオーブンを予熱してから焼き始めます。天板も一緒に予熱しておくことで、生地を置いた瞬間から下火が入り、釜伸びを促す効果があります。

焼き始めに蒸気を与えることがクラスト(外皮)の形成と窯伸びに大きく影響します。スチーム機能付きのオーブンでは8〜10分スチームをかけ、その後は乾燥した熱で外皮を仕上げます。スチーム機能がない場合は、焼き石や耐熱石を上段の天板に入れ、焼き始めに熱湯を少量かけて蒸気を発生させる方法があります(オーブンの取扱説明書で安全に使える方法をご確認ください)。

焼成時間の目安は250℃で10分(蒸気あり)、その後240〜230℃に下げてさらに15〜18分程度です。途中で天板の向きを変えると焼きムラが防ぎやすくなります。焼き上がりはクラストが薄く、たたくと軽く響くような音がする状態が完成の目安です。

    >オーブンは最高温度(250〜300℃)でしっかり予熱する>天板も一緒に予熱しておくと下火が安定する>焼き始めの蒸気が窯伸びとクラストの仕上がりに直結する>焼成中の温度を途中で少し下げると外皮の焦げすぎを防げる>叩いたときの音で焼き上がりを判断する習慣をつけるとよい

よくある失敗と原因の切り分け方

ロデヴは工程が多く、失敗の原因が複数重なることも珍しくありません。症状ごとに原因を絞り込んでいくことで、次の改善点が見えてきます。

生地がべたつきすぎて成形できない

最もよくある悩みが「生地が手や台にくっついて成形にならない」という状態です。主な原因は、捏ね不足によるグルテン形成の不完全さか、生地温度が高くなりすぎていることの2つです。

対処法としては、成形前に生地を冷蔵庫で30分程度冷やす方法が有効です。生地温度が下がると締まりが出て、扱いやすくなります。また、手に少量の水をつけて作業すると、手への付着が減ります。作業台への打ち粉は多めに振り、触れる時間を最小限にすることも大切です。捏ね段階でグルテンがしっかりつながっていれば、バシナージュ後でも生地のまとまり感は出やすくなります。

窯伸びしない・クープが割れない

焼成後に生地が横に広がるだけで上に伸びない場合、原因として考えられるのは「発酵しすぎ」「蒸気不足」「オーブン温度の不足」の3点です。発酵が進みすぎると焼成時に伸びる余力がなくなるため、一次発酵と二次発酵の見極めは生地の膨らみと触感で判断します。

蒸気が不足していると、生地の表面が早く焼き固まってしまい、内部のガスが押し上げる力に表面の皮が耐えられず横に広がります。スチーム機能が弱いオーブンでは、焼き石などを活用して蒸気を補う工夫が必要になる場合があります。オーブンの蒸気機能については各メーカーの取扱説明書で確認してください。

内部の気泡が小さく詰まっている

断面の気泡が小さく均一すぎる場合は、「成形時に触りすぎた」か「折りたたみが強すぎた」可能性があります。ガスを抜きすぎると大きな気泡が形成されにくくなります。成形は最低限の折りたたみにとどめ、ガスをなるべく逃がさないよう意識します。

パンチの強さにも注意が必要です。1回のパンチで生地をつぶすように押さえると、せっかく蓄積されたガスが抜けてしまいます。生地の下からすくい上げて重ねる動作を中心にして、押す力は最小限にします。また全粒粉の割合が高いほど気泡は小さくなりやすいため、粗い気泡を目指す場合は全粒粉の配合比率を調整する余地があります。

失敗症状から原因を絞り込む目安
・べたつきすぎ:捏ね不足または生地温度が高い
・窯伸びしない:発酵過多・蒸気不足・温度不足のいずれか
・気泡が小さい:成形時のガス抜きすぎ・パンチが強すぎる
・形が崩れる:二次発酵が長すぎる・生地温度が高い
    >失敗の症状が複数ある場合は1工程ずつ見直すのが近道>粉の種類を変えると吸水や発酵の挙動が変わることがある>オーブンの癖(温度のムラ・蒸気の強さ)を把握することも安定した焼成につながる>同じレシピで複数回焼いて記録をとると原因の切り分けがしやすくなる

まとめ

ロデヴは高加水というハードルがあるものの、オートリーズ・バシナージュ・折りたたみ発酵という3つの工程の役割を理解して進めれば、家庭でも十分に焼き上げることができます。

まずはオートリーズで粉と水をしっかり水和させ、捏ねでグルテンをつなげてからバシナージュに進む流れを一度体験してみてください。失敗した場合は、症状ごとに1工程ずつ見直していくと改善点が絞りやすくなります。

ロデヴならではの外はカリッと中はもちもちとした食感は、一度焼き上げると他のハードパンとの違いが実感できます。最初は配合や発酵を丁寧に記録しながら進めることで、自分のオーブンや粉の特性に合った仕上がりが見えてきます。

当ブログの主な情報源