ショートニングの代用には、バターやマーガリン、植物油などを使えます。パン作りでは、手元にショートニングがなくても別の油脂で作れる場合があります。ただし、置き換えた油脂によって香り、口当たり、生地の扱いやすさが変わるため、完成品がまったく同じになるわけではありません。
ショートニングは製菓・製パンに使われる油脂で、メーカー公式情報では、風味を強く付けずに素材の味を生かしながら食感や作業性を整える用途が示されています。バターやマーガリンは水分や風味を含み、液体の植物油は固さそのものが違います。この差を知ると、代用品を選びやすくなります。
初めて代用する方は、まず作るパンで何を優先したいかを決めてみてください。バターの香りを足したいのか、ショートニングに近い軽い風味を保ちたいのか、家にある油で作りたいのかによって選択肢は変わります。ここでは代用品の特徴と、失敗しにくい置き換え方を順に説明します。
ショートニング代用は何が使える?パン向け候補を比較
ショートニングの代用品として使いやすいのは、バター、マーガリン、植物油などです。ニップン公式案内でも、ショートニングがない場合はマーガリンやバターで代用できるとされています。まずは各油脂の違いを比べ、パンの仕上がりがどう変わるかを押さえます。
バターは風味を足したいパンで使いやすい
バターはショートニングの代用品として分かりやすい選択肢です。ニップンは、家庭のパン作りでショートニングがない場合にバターでも作れると案内しています。固形油脂なので、液体油よりも元の工程を大きく変えずに扱いやすい点もあります。
一方で、ショートニングとバターは中身が同じではありません。東京カネカフードはショートニングを無水の油脂成分からなる製品として説明しており、バターは乳由来の風味と水分を含みます。そのため、同じ重さへ置き換えても油脂そのものの量や生地へ入る水分は一致しません。
バターを使うと、焼き上がったパンには乳由来の香りやコクが加わります。食パンやロールパンでは、この変化を好ましく感じることもあるでしょう。ただし「ショートニングと同じ無味に近い仕上がり」を求める場合は、風味の差が目立つ可能性があります。
初めての方は、元レシピでショートニングの使用量が多くないパンから試すと変化をつかみやすくなります。慣れてきたら、焼きたてと翌日の食感、香りの強さまで比べ、自分が求めるパンに合うかを判断してみてください。
マーガリンは形状が近く幅広いパンに合わせやすい
マーガリンも、ニップンがショートニングの代用品として示している油脂です。東京カネカフードでは、マーガリンは精製した油脂に粉乳や発酵乳、食塩などを加えて乳化した食品として説明されています。ショートニングとは水分や副原料が異なりますが、家庭では固形状で扱いやすい候補です。
マーガリンを選ぶときに見落としやすいのが、製品による違いです。食塩を含むタイプ、風味を付けたタイプ、ファットスプレッドなどがあり、商品名が似ていても中身は同じとは限りません。元レシピに塩が入る場合は、代用品の食塩相当量も確認しておくと安心です。
パンの風味をショートニングより少し豊かにしつつ、バターほど乳風味を強くしたくない場合には選びやすいでしょう。ただし、マーガリンの香りや水分は商品ごとに違うため、毎回違う製品へ替えると生地の感触も変わる可能性があります。
再現性を高めたいなら、使った商品の名称をメモしておくと便利です。「マーガリンで代用」とだけ残すより、「食塩不使用の製菓用マーガリン」のように記録すれば、次回に同じ条件を作りやすくなります。
植物油は使えるが固形油脂と同じ働きではない
サラダ油や米油などの植物油も、パンの油脂として使われることがあります。ただし、液体油はショートニングのような固形油脂とは物性が違います。ショートニングは可塑性、つまり力を加えると形を変えながら一定の形を保ちやすい性質を持つ製品があり、製パンで作業性を整える目的にも使われています。
液体油へ替えると、ショートニングを練り込む工程と同じ感覚にはなりません。生地へのなじみ方や手触りが変わるため、元レシピのショートニング量をそのまま機械的に液体油へ置き換えるより、最初から植物油を使うパンレシピを基準にするほうが確実です。
特に、油脂の固さが成形に関係するパンでは違いが出やすくなります。反対に、シンプルな丸パンや食事パンなど、液体油を使う既存レシピが多い種類なら試しやすいでしょう。油の香りも商品によって違うため、素材の風味を残したいなら香りが穏やかな油を選ぶ考え方があります。
植物油は「ショートニングと同じもの」ではなく、「別の油脂で成立するパンへ寄せる」選択肢と考えてください。この考え方なら、無理に同じ食感を再現しようとして配合を複雑にする必要がありません。
| 代用品 | 特徴 | パンで変わりやすい点 |
|---|---|---|
| バター | 乳由来の風味がある固形油脂 | 香りとコクが強くなる |
| マーガリン | 固形で扱いやすいが製品差がある | 風味、水分、塩分が変わる |
| 植物油 | 常温で液体のものが多い | 生地へのなじみ方や作業性が変わる |
- バターとマーガリンは公式にも代用品として案内されています。
- バターは乳由来の香りが加わります。
- マーガリンは商品ごとの塩分や水分を確認します。
- 植物油は固形油脂と同じ働きではないため、専用レシピを基準にします。
ショートニングと代用品で仕上がりが変わる理由
代用品の候補が分かったところで、次はなぜ同じ重さに替えても結果が変わるのかを見ます。ショートニングは油脂の割合、風味、固さに特徴があります。バターやマーガリン、液体油との違いを理解すると、代用後の変化を失敗と決めつけずに判断できます。
ショートニングは風味を付けにくい油脂
東京カネカフードは、ショートニングを植物油脂や動物油脂を原料とした油脂製品で、風味を付与せず、製菓・製パンで素材の味を生かしながら食感や作業性の向上に使うと説明しています。不二製油もショートニング類を製パン・製菓用途の油脂として展開しています。
この特徴は代用品選びで大切です。バターへ替えると乳の香りが入り、マーガリンでは商品に付けられた香りが加わる場合があります。つまり、パンが問題なく焼けても、味の印象は元レシピから変わるわけです。
例えば、小麦や具材の香りを前面に出すパンなら、ショートニングの控えめな風味が配合の意図になっていることがあります。そこへバターを入れると、コクが増す一方で素材の香りとのバランスも変わります。どちらが良い悪いではなく、完成させたい味で選ぶことが大切です。
代用するときは「同じパンを完全再現する」より、「どの変化なら受け入れられるか」を先に考えてください。風味が変わってもよいならバター、比較的軽い方向を狙うならマーガリンや香りの穏やかな油というように候補を絞れます。
水分量の違いが生地の感触に影響する
ショートニングとバター、マーガリンの大きな違いの一つは水分です。ショートニングは油脂を主体とする一方、バターやマーガリンは水分を含みます。そのため同じ重量を置き換えると、元のレシピにはなかった水分が生地へ加わることになります。
家庭の少量配合では大きな問題にならない場合もありますが、ショートニングの使用量が増えるほど差は無視しにくくなります。パン生地が元よりやわらかい、手に付きやすいと感じたときは、こね方だけでなく代用品由来の水分も候補になります。
ただし、最初から自己流で水を大幅に減らすのは避けたほうがよいでしょう。粉の吸水は銘柄や室温などでも変わります。初回は信頼できる代用レシピを使うか、元レシピを変える場合でも一度に複数の条件を動かさず、生地の状態を見て次回調整してください。
慣れてきた方は、油脂の成分表示やメーカー資料を見ながら配合を考える方法もあります。初めての方は、細かな計算より「代用品には水分差がある」と覚えておくだけでも、べたつきの原因を切り分けやすくなります。
ショートニングはパンを膨らませる材料ではない
見落としやすい点として、ショートニングそのものにパンを膨らませる力があるわけではありません。ニップン公式のQ&Aでは、ショートニングを入れたからパンが膨らむのではなく、パンを膨らませるためにはドライイーストが別に必要だと説明されています。
ショートニングを別の油脂へ替えたあとに膨らみが変わった場合、「代用品には膨らませる力がないから」と考えるのは適切ではありません。油脂の量や入れるタイミング、生地のこね上がり、発酵状態など、別の条件も一緒に確認する必要があります。
例えば油脂を早い段階で多く入れ、生地が十分につながる前にこねを終えると、元レシピと違う状態になることがあります。ホームベーカリーなら投入方法が機種ごとに決められている場合があるため、メーカーのレシピや取扱説明書を優先してください。
「ショートニングをバターに替えたら膨らまなかった」というときも、油脂だけを原因に決めつけず、イースト、計量、発酵温度、生地の状態を順に見ていくと原因を探しやすくなります。
風味、水分、固さ、生地へのなじみ方が変わります。
ショートニング自体は膨張剤ではないため、膨らみの問題は発酵条件も一緒に確認します。
- ショートニングは素材の風味を生かしやすい油脂です。
- バターやマーガリンへ替えると水分も変わります。
- 同じ重量でも油脂成分が同じとは限りません。
- 膨らみはイーストや発酵条件も含めて判断します。

パン別にショートニング代用を選ぶ考え方
油脂の違いが分かったところで、今度は作るパンから逆算します。食パン、菓子パン、食事パンでは、油脂に求める役割が少しずつ違います。どの代用品が万能かを探すより、元のパンで風味、やわらかさ、作業性のどれを残したいかを見るほうが選びやすくなります。
食パンは風味と翌日の食感を比べる
食パンでは、ショートニングがふっくらした食感を作る目的で使われる商品やレシピがあります。ニップンの家庭向けショートニングも、パンをふっくら焼き上げる用途を案内しています。代用品を使う場合は、焼きたての膨らみだけでなく、香りや翌日の口当たりまで比べると違いが分かります。
バターへ替えるとコクのある食パンになり、マーガリンなら商品によって軽い風味に寄せやすいでしょう。植物油を使うなら、最初から植物油を前提にした食パンレシピを選ぶと工程を合わせやすくなります。
トーストしてバターやジャムを塗ることが多いなら、生地の油脂風味が少し変わっても気にならない場合があります。何も付けずに食べることが多いなら、油脂そのものの香りが目立ちやすくなります。普段の食べ方まで考えると、自分に合う代用品を選びやすくなります。
ホームベーカリーを使う場合は、機種の指定レシピを優先してください。自動工程ではこねや発酵の時間が決まっているため、材料を大きく変えるより、メーカーが案内する範囲で試すほうが再現しやすくなります。
菓子パンはバターの香りを足す選択もある
あんパン、クリームパン、メロンパンなどの菓子パンでは、ショートニングの控えめな風味がフィリングを邪魔しにくい利点になります。一方で、バターへ替えて生地そのものに乳風味を足すと、よりリッチな印象に変えることもできます。
ここでは「代用すると味が悪くなる」と考える必要はありません。ショートニングと同じ味にはならなくても、バター風味が具材と合えば別の魅力になります。例えばあんことバターの組み合わせが好きな方なら、生地のコクが増す方向を好むかもしれません。
ただし、甘いフィリング、砂糖の多い生地、油脂の多い配合では、全体が重く感じる場合もあります。代用品だけを単独で評価せず、パン生地と具材を合わせた味で判断してください。
初めてなら、同じ生地を小さく分け、一部だけバターに置き換える実験は配合管理が難しくなります。まずは1回分を一つの油脂で作り、次回に別の油脂で同じパンを焼くほうが比較しやすいでしょう。
食事パンは植物油を使う別レシピへ切り替えやすい
総菜パンやシンプルな食事パンでは、ショートニングの代わりに植物油を使うレシピへ切り替える方法があります。液体油はショートニングとは物性が違うため、元レシピの数字だけを置換するより、植物油で成立する配合全体を参考にするのが安全です。
例えば香りの穏やかな油なら、小麦や具材の風味を前に出しやすくなります。オリーブオイルのように香りのある油なら、チーズやハーブを使うパンと組み合わせることで、その香りを特徴として生かせます。
一方、折り込み生地のように固形油脂の硬さが工程そのものに関わるパンでは、液体油への単純な置き換えは向きません。油脂の層を作る工程では、形を保つ性質が必要になるためです。こうしたパンは専用レシピを使ってください。
つまり、代用品は「材料だけの交換」と「レシピごとの変更」を使い分けることが大切です。固形油脂同士なら比較的試しやすく、液体油へ大きく性質が変わる場合はレシピ全体を替えると失敗を減らせます。
ミニQ&A 1:ショートニングとバターを半分ずつにしてもよいですか。併用する製パン配合はありますが、元レシピから変える場合は風味と水分が変わります。まずは一つのレシピで少量から試し、焼き上がりを記録すると調整しやすいです。
ミニQ&A 2:有塩バターでも代用できますか。パンとして作れる場合はありますが、元レシピの塩と重なります。製品の食塩相当量とレシピの塩を確認し、塩味だけでなく発酵への影響も考えて、食塩不使用の代用品を使うレシピのほうが比較しやすいでしょう。
- 食パンは焼きたてと翌日の両方を比べます。
- 菓子パンではバターの香りを生かす方向も選べます。
- 植物油へ替えるなら専用レシピを使うと確実です。
- 折り込み生地など固形油脂の性質が必要なパンは単純置換を避けます。
ショートニング代用で失敗しにくくする手順と安全面
パン別の選び方を押さえたら、最後は実際の置き換え手順です。代用では一度に多くの条件を変えないことが大切です。また、ショートニングで話題になりやすいトランス脂肪酸についても、古いイメージだけで判断せず、現在の公的情報を基準に整理します。
最初は油脂だけを変更して記録する
お気に入りのレシピを変更するなら、最初の1回は油脂だけを変え、粉、水、砂糖、イーストまで同時に変更しないほうが原因を追いやすくなります。生地が違って感じても、どの変更が影響したのか分からなくなるのを防ぐためです。
記録する内容は難しくありません。「使った油脂の商品名」「こね上がりのべたつき」「発酵後の大きさ」「焼き色」「翌日の食感」程度で十分です。次に同じパンを焼くとき、前回との違いを具体的に比べられます。
初めての方は、まずニップンなどメーカーがバターやマーガリンで代用可能と案内している範囲から試すと安心です。慣れてきたら植物油を使う別レシピと比較し、自分が好む食感を探してみてください。
計量は目分量を避けます。特に液体油はボウルへ直接注ぐと量を戻しにくいため、別容器で計ってから加えると失敗を減らせます。ホームベーカリーでは材料の投入順も機種の説明書に従ってください。
トランス脂肪酸は現在の公的情報で判断する
ショートニングという言葉から、トランス脂肪酸を心配する方もいるかもしれません。農林水産省は、トランス脂肪酸には油脂の加工・精製工程で生じるものと天然由来のものがあると説明しています。また、部分水素添加油脂を用いたショートニングなどに含まれる場合があるとしています。
一方で、農林水産省が公表した令和4・5年度の調査では、平成18・19年度や平成26・27年度と比べ、調査対象食品のトランス脂肪酸は全体的に減少傾向でした。食品事業者による低減の取り組みが進んできたことも示されています。
そのため「ショートニングなら必ず昔と同じ量のトランス脂肪酸を含む」と一律に判断するのは適切ではありません。実際に植田製油などのメーカーでは、部分水素添加油脂を使わない低トランスタイプのショートニングも案内されています。
健康面を理由に代用品を選ぶ場合は、ショートニングという名称だけでなく、使用する製品の表示やメーカー情報を確認してください。農林水産省は脂質全体のバランスにも触れており、特定の油脂だけを極端に避けるのではなく、食生活全体で考えることが大切です。
アレルギーと原材料表示は代用品ごとに確認する
代用品へ替えると、アレルゲンも変わる可能性があります。バターは乳由来です。マーガリンやショートニングには、製品によって乳成分や大豆由来原料などが含まれる場合があります。ニップンの家庭向けショートニングでも、アレルゲン情報として大豆が示されています。
「植物性だから乳成分はない」「ショートニングだから大豆はない」と名称だけで判断しないでください。原材料やアレルゲンは商品ごとに違います。消費者庁の食品表示に関する公式情報と、実際に使う商品のパッケージ表示を確認することが基本です。
家族や友人へパンを渡す場合も、元レシピから油脂を変更したことを忘れないようにしてください。例えばショートニングからバターへ替えれば、乳成分を避けている人には大きな変更になります。味の代用が成立しても、アレルギー面で同等とは限りません。
具体的には、材料を並べる段階で代用品のパッケージを確認し、乳、大豆など気になる表示を先に見ます。安全面の確認を済ませてから計量に進む習慣にすると、パン作りの途中で迷いにくくなります。
トランス脂肪酸は古いイメージだけでなく、現在の製品表示と公的情報で判断します。
バター、マーガリン、ショートニングはアレルゲンが同じとは限らないため、商品ごとに確認します。
- 油脂だけを変更すると仕上がりの差を判断しやすくなります。
- 使った商品名と生地の状態を記録します。
- トランス脂肪酸は近年の調査と製品情報を確認します。
- 代用品へ替えたらアレルゲン表示も改めて確認します。
まとめ
ショートニングの代用にはバターやマーガリンを使え、植物油もパンの種類によって選択肢になります。ただし、ショートニングは油脂主体で風味が控えめな一方、バターやマーガリンには水分や風味があり、液体油は固さそのものが違います。代用できることと、同じ仕上がりになることは分けて考えるのがポイントです。
最初に試すなら、元レシピのほかの材料を変えず、バターかマーガリンのどちらか一つだけへ置き換えてみてください。焼きたての香り、生地のやわらかさ、翌日の食感をメモすると、自分のパンに合う油脂が見つかりやすくなります。
ショートニングが手元になくても、パン作りを諦める必要はありません。作りたいパンで「軽い風味を残す」「バターのコクを足す」「植物油を使う別レシピへ切り替える」のどれを選ぶか考え、無理のない方法から試してみてください。

